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「し、失礼しま──うっ!」
席に着くなりむせ返るようなどぎつい香水のような匂いが鼻を突き、鳴海は鼻での呼吸を躊躇する。
トイレのそばだから芳香剤かと思ったが、それにしてはきつ過ぎる。
目線を上げると、カウンターを隔てて向かい合わせに匂いの主はいた。
『ありえねぇ……』第一印象はこの一言に尽きる。
目の前には60代の中年と言うにはの決して若くない女性がいた。
……それだけなら別に構わないのだが、何故だろう? この年齢の女性はこぞって髪の毛を紫に染めなくては気がすまないらしい。
全国区かどうかは分からないが、この地域の特定のご高齢の女性は何故か白髪を紫に染める輩が多かった。
そして目の前の女性は、鮮やかな耳に掛かる程度の紫の癖毛をなびかせまるでパテでシワを埋めるようにファンデーションを塗り固めた顔にピンクの口紅を引き、縁なし眼鏡からマスカラの定義を履き違えた目でこちらを見つめ、今時ヤンキーでもしないような糸のように細い眉をぴくぴくと動かし、身の程知らずにも少し小さめの薄桃色のスーツにピチピチに体を押し込み胸を窮屈そうに自己主張させる。
___一体なんのつもりなんだろう……見ていて痛々しい___
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