不思議職安

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 鳴海は、ハローワークの中庭にあるベンチに腰掛けて自分の不運と間抜けさを呪った。  凄まじく落ち込む鳴海の頬には先ほどから吹きすさぶ風が当たって痛い……日中とはいえ二月の風は冷たい。  そう、今は二月なのだ!  鳴海の通っていた私立尚甲学園高等学校は、県内でも屈指の進学校で99.9%の生徒は進学する。  海外の大学への進学率も高く、そのため公立高校より一ヶ月早く卒業式を行い残り一ヶ月間を進学休みとし海外への渡航準備をしたり不足単位を取得したりなど忙しく送るのだが、あくまで卒業式を早く行っているだけであって実質卒業となるのは3月31日なのだ。  つまり現在鳴海はまだ高校生であり、基本ハローワークの利用はできるが進路指導部の先生とよく話をするようにという事なのだそうだ。  なるほど、先ほどの卒業式にて学園長より賜った卒業証書を見れば日付は3月31日となっている。  (恥ずかしすぎる……死にそうだ!!)  確かに無知だったとは言え、社会進出初の大失態に鳴海は凹まずにはいられなかった。  情けなさに目頭が熱くなる中、今までの人生が走馬灯のように頭を駆け巡る。
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