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思えば、まるで熊手で水を掻くような人生だった。
18年前、大学二年生の父:砂辺春海とアルバイターの母:森本せつなの間に鳴海は生を受けた。
そのころ流行の『出来ちゃった婚』をした二人は、父の実家に転がり込み父は大学へ母は嫁姑バトルをしながら鳴海は2歳まで父方の実家で暮らした。
祖母の口癖は『子供さえ出来なければ……』だった。
父は無事銀行に就職出来たが、生活費を入れることは無く『自分で稼いだ金は自分の物だ、お前が生まれたせいで俺は好きなことが出来ない』と破天荒なジャイアニズムを提唱し『俺には音楽の才能がある』が父の口癖で夢はミュージシャンになることらしく家に金を入れないのは夢のための貯金らしい。
ちなみに、鳴海の母を口説いたのも合コンでのカラオケなのだそうだ。
母は保育士で仕事一筋の人、自分の子など放置して何よりも仕事を優先した。
父が生活費を入れないので仕方ないと思っていたのだが、そうじゃないようだと悟ったのは7歳の頃。
高熱と吐き気……いや吐いてた鳴海を母は出勤がてら小学校に放置した。
『今日は受け持ちクラスの子の誕生会で、私司会なの!さっさと学校行って頂戴!!』と言ったのを鳴海は今でもよく覚えている。
___母よ、貴女の子供も本日誕生日なんだが?___
と、幼い鳴海は去り行く母の背中に心の中で悪態をついたものだ。
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