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僕たちが出会ったのは、高校生の頃だった。高校一年生の時に僕と彼女は同じクラスになった。肩までのびた茶色い髪で、体の線は細かったけど、背筋がいつもぴんとしていて姿勢正しく席に座っていた。彼女はいつも本を読んでいた。授業の合間に、みんなが必死で次の授業の予習をする中、彼女は一人本を読んでいた。「予習やってないよー」とか言って男子が必死で友達にノートを借りて答えを写したり、女子たちがわーわー言って宿題のプリントの答えを確認し合ったりしている中、一人静かに本を読んでいた。
最初は教科書を読んでいるのかと思って、真面目だなあと思ったけれど、彼女の本には深緑のブックカバーがかかっていた。僕は何となくそんな彼女に惹かれた。
僕は恋についてよく分からなかったから、恋愛映画を見て、毎日ラジオをつけながら勉強してラブソングを聴きまくって、恋愛小説を一冊だけ借りて読んで、恋とは何か知ろうとした。その物語の主人公はみんな僕と同じように胸が熱く、いつもその人を想っては心を焦がしていたし、わけもなくどきどきしていた。
やっぱりこれは恋なんだ、と思った。ただ僕と違うのはみんな行動を起こしていることだった。告白して振られた少年も、彼女の前で恥ずかしい失敗をした彼も、みんな行動を起こしたからその結果があるのだった。僕は彼らがうらやましくなった。そうしてきちんと物語が進んでいることが、予想外の展開でも場面が進展していることが。僕も動き出さなければと思った。でも結局、次の日教室で席に座っている彼女を前にすると、言葉が出てこなかった。いつも猫背で自信がなさそうな僕だった。
彼女に出会ってから一年間、僕は一言も話しかけられなかった。4月に出会って、もうカレンダーは3月、終業式が近づくにつれて僕は焦ってきた。2年になればクラス替えがある。僕たちは同じクラスになれないかもしれない。それどころか、彼女がもし文系を選んでいたとしたら、僕たちは一言も言葉を交わさないまま卒業して、離ればなれになって……。
そんなことを考えても勇気は出ずに終業式が来て、僕たちはさよならをした。春休みの間中、僕は彼女のことをずっと考えていた。また始業式がやってきて、僕たちは高校二年生になった。
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