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とある大型ショッピングセンターの一角に人知れず画力の高い絵描きさんが居ます。
もしかしたらプロなのでは?と思わせる高い画力は数年間の独学による成果だと想います。
恥ずかしがり屋なのかサングラスをかけていて、延び放題の髪の毛は生活の苦しさを伺わせます。
彼の絵はとても漫画漫画した絵なのですが、その描いた絵を枕に敷いて寝ると、絵が織り成す夢を見られるとの噂です。
ある時に一人の客が、行方不明の恋人の絵を書いて貰ったら、夢に出てきて、周りの風景や看板から恋人の居場所を突き止められたとの噂があってからは、一躍有名になりました。
「映画の舞台で暴れたいぜ!」と言ったキャラの漫画は映画化を予見していたり
「俺達のバンドは日本では収まりたくないぜ」と言ったバンドは世界進出を果たすなどキリがありません。
今日も彼は、お客の注文に対して黙々と絵描きを続けていますが、ある時にテレビでも名の知れた方がお忍びで訪れた時があったと聞きました。
その方は、似顔絵を注文したそうです。
絵描きの彼に何を予言して貰ったかは分かりませんが、その事がきっかけで有名になったとの噂もあります。
他にも警察の方が、犯人の似顔絵を依頼した事もあったそうです。そっくりさんが誤認逮捕される場合もあるそうですが、それはご愛嬌とばかりに絵描きの彼は穏やかに笑うばかりです。
彼の絵は、ただの漫画の絵ですが、夢の中では生きていたり、ところ狭しと暴れているのですから不思議でなりません。
彼の独立を支援したいと、様々なパトロンが訪れるのですが、応じようとはしませんでした。
「僕は店に訪れるたくさんの客と接する事が趣味で、皆さんの顔を見られるだけで幸せですから」と謙虚な振る舞い。
子供でも払える1枚100円で描いているのだから貧乏なのでしょう。
たまに、フードコートの食べ物を差し入れしてあげると涙を流して美味しそうにいただくのですから応援してあげたくなります。
彼の好物は珈琲だそうです。
名店の一杯ではなく、缶珈琲とどこまでも謙虚です。
彼は次にどんな絵を描き、どんなキャラクターのどんな話を夢見させてくれるのか楽しみで仕方ありません。
アマチュア?違いますよ。
彼はプロなのですよ。私達の夢の中では…
「良い夢見ろよ!」そんな彼の言葉がステキ過ぎます。
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