噂の彼女は体育祭実行委員!

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 ホームルームが終わったらしく、担任の先生が号令をかける。私は立ちあがり、「礼」という先生の言葉で頭を下げて、菅くんに向きなおった。  菅くんは起立も礼もせず、号令が終わるとすぐに鞄を手に学校を去る。今日も例外ではなく、机の中の教科書類を鞄に突っ込むと、椅子を引いて立ち上がった。 「あ、あのっ!」 「……何」  意を決して、足早に脇を通り過ぎようとした菅くんを呼び止めると、怪訝そうに眉を寄せて見下ろされた。  うっ……威圧感……。  百五十センチと少ししかない私と比べて、身長差は四十センチ近くあるのではないだろうか。内海くんも背が高いけれど、菅くんはそれ以上だ。 「菅くん、今日委員会なんだけど……覚えてた?」  ごくりと生唾をのんで切り出す。 「委員会? 何の」 「体育祭実行委員の。菅くん、先生に言われて委員になったでしょ?」 「……ああ」  私に言われてようやく思い出したように声を漏らす。それから一つ、大きなため息をついた。 「あのさ。悪いけど、俺今日用事あって出られねえから。一人で出てくんない?」 「えっと、用事って……?」  まるで悪びれていない表情で言った菅くんに、首を傾げて尋ねる。菅くんは苛立ったようにこちらを睨んだ。 「どうせ出ねえんだから、言う意味ねえだろ」 「……それは……」  そうかもしれないけど……でも、私一人で出るんだし、理由くらいは教えて欲しいような……。 「じゃ、頼んだから」 「あ……っ」  菅くんは私の返事を待たず、教室を出ていく。頭の中で考えるばかりで言い返すことが出来なかった私は、結局何も言えないまま菅くんを見送ることになった。 「……仕方ないか」  ほとんど人のいなくなった教室でぽつりと呟き、鞄を肩に掛ける。  委員会と言っても、今日は初回だし、恐らく大した議題は出ないだろう。一人でも問題は無いはずだ。  会議室として使われる隣の隣のクラス、二年三組の教室に入ると、出来るだけ隅の方の席を選んで座る。  すると、突然隣の机の上に音を立てて鞄が乗った。驚いて顔を上げた先には、ふんわりとした丸いボブヘアーが可愛らしい女の子が立っている。 「すみません、隣いいですか?」 「え? あ、はい。どうぞ」 「ありがとうございます」  女の子は、丸い大きな目を細め、小首を傾げてはにかんだ笑顔を浮かべる。声も、顔も、仕草も、何から何まで可愛らしい女の子だ。
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