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俺は今、目の前の物体X…ではなく、千年が俺のために作ったと言う生チョコを前に、明らかに動揺をしていた。
あの時のくそ不味いチョコの味がリアルに甦る。
「真ちゃん、食べてよ。私の気持ち。早くぅ。」
早くぅ、と女から最速されてこれほどまで嬉しくない事がかつてあっただろうか。
俺は意を決して、それを口に運ぶ。
千年と結婚したら飯は全て沢さんに任せよう。
と心に強く誓う。
「どう?」
と聞く千年に
「自分で確かめろよ。」
と千年の唇をまた塞いだ。
「ぅんんんん………っん、はぁ…」
最初、衝撃的な味に唸り声をあげていた千年が俺の舌が執拗に絡みだすと段々艶っぽい声になってきた。
俺はくそ不味いチョコの味を消すべく、千年に更に深いキスをする。
部屋に響く、舌を絡める音と千年の甘い吐息…
「ぅん………っ」
「兄貴、いつまで打ち合わせしてんだよ。みんなもうお待ちかねだぜ。千年の両親も到着済だ。」
翔真がドアの外から声を掛けてくる。
中で何をしているのか想像し、ドアを開けずに声を掛けてくる辺り、さすが我が弟だと思う。
けれど俺は言う。
「客なんか、いくらでも待たせときゃいいんだ。俺は今日までどれだけ待ったと思ってる。」
千年が間抜け面で俺を見る。
ドアの外では翔真がりょーかい!ごゆっくり~と言ったのが聞こえた。
ああ、ゆっくりするさ、
俺は何せ待ったんだからな。
これから俺は幸せになるんだ。
俺が幸せになれば千年も柊の家も、俺に関わる全ての人達も幸せになるはずだ。
だから、少しくらい待てよ。
やっと幸せを掴んだのだから。
もう少し、この甘い余韻に浸らせてくれ。
つまり
これが、次期家元、俺の本音だ。
「千年、愛してる………」
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