Or, Argent

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 せめてもの罪滅ぼし、なんて言うと大げさかもしれない。 それでも僕の中ではすっかりそんな気分で、今までないがしろにしてきたぶんを埋め合わせたい衝動に駆られた。記憶の中のあの笑顔を過去のものにしたくなかった。  せっかくだから手紙だけじゃなく何かイギリスらしいお土産でも送ってあげよう。  何がいいだろう。ブランド品なんかを好む人じゃないし、イギリスといえばやっぱり紅茶かな。 日本もこれから寒くなるし、毛織物のブランケットとか。本場のスコッチとかショートブレッド。マーマイトはよしておこう。チョコスプレッドと間違えるといけない。  あれこれ思案しながら他にイギリスらしいものはないかと、母の手紙と一緒に来ていた郵便物に何となく目を通す。 「あ。これ……」  それはブラスラビングセンターからの催し物のチラシだった。
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