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第1話
不気味な目が二つ……
かすかな月明かりに赤く浮かんでいた……
その口がワニのように二つに割れると、金属がこすれ合うような、鋭い鳴き声を発した。
今でも耳に残る恐ろしい鳴き声だ。
体を揺さぶって、腕を抜こうとしたけど、どうにも動けない。
もうダメだ…… 殺される!
こっ……こいつ!僕の事ねらってる!
その時の僕は、声も出すことができなかった……
今でも、時々夢を見る。
この悪夢のような出来事は、10年前のある日、
僕が5歳のころのことだった……
眠っていた僕は、大人の声に起こされた。
「気がついたか」
僕の知らない声だった。
意識はもうろうとしていて、手首と足首が痛かった。
立ったまま、背中の柱に縛られていたからだ。
まわりを見渡すと、背後には、西洋風の城壁がどこまでも続いていて、深い堀を挟んで、何本も柱が立ち並んでいる。
そのうちの二本に、僕とその人が縛られている。
この時、この場所が、魔物に罪人を食べさせる為の処刑台なんてことは、まだわかっていなかった。
ただ、この場所が放つ、不吉なオーラを感じていた……
意識の方は、少しづつ戻りつつあった。
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