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週末、ツトムは朝早くから出掛けて行き、
『飯食って帰るね』
とメールが夕方来たきりで、結局日付が変わってからの帰宅でした。
私は帰宅したツトムが不機嫌だったので
『遅かったね?どうしたの?』
と聞くと
『小林の車がトラブってさぁ。
山で足止め食らったんだよ。
それで夕飯は小林のおごりになったんだけど、山辺んとこの奥さんから電話が来てさ?
ファミレスなのに喧嘩してんの!
奥さんの怒鳴り声が丸聞こえで恥ずかしかったよ。
山辺に聞いたら、連絡したのに
『遅いのは浮気してるんだ』
って怒ってるんだってさ。
小林は謝ってるし、山辺も小林に謝ってるし、なんか山辺の奥さんてダメだな。
旦那を信用してないってことだもん。
ツトムんとこはいいなって言われたよ。
当たり前じゃん?
ちゃんと連絡したのに、遅くなったくらいで浮気なんて言う方がおかしいよ。なぁ?』
いつもに増して饒舌なツトムの話は、嘘とは思えませんでした。
小林さんも山辺さんも、あまり面識はありませんでしたが、時々ツトムを迎えにきて挨拶を交わしていたので、本当に思えました。
『山辺さんちは小さなお子さんもいるから、奥さんも大変なんじゃないかな?
気持ち分からなくは無いけどね。』
否定した訳ではなく、そう言うと
『え?
チエコも俺が遅くなったら疑うの?
それじゃあ、朝日を見に行こうって話しがあるのに俺だけ行けないじゃん?』
そう言われてしまいました。
『疑うわけじゃないよ。
ただ奥さんの気持ちも分かるなって言っただけ。
それより朝日なんて、お正月でもないのに見に行くの?』
『青春ごっこやろうってノリ。
きっかけだけかな。
要は走りに行きたいだけだからさ。』
そんな理由でツトムは、週末に泊まりで出掛けたのでした。
その時は、ツトムの話をまだ信じていました。
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