チエコ・落胆

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ツトムは上機嫌で帰ってきました。 『チエコお腹すいたぁ!』 と、手を洗いに私の横をすり抜けた時、一瞬甘い香りがしました。 ん? 普段からオーデコロンや車の香水など、鼻の敏感な私では頭痛がするほど着けているツトムですから、あまり気にならないのですが、なんとなく女性用の香水の様な気がしました。 『車の香水、変えた?』 すると、ちょっと驚いた顔をしたツトムですが 『分かった? さすがチエコは鼻がいいよね? 臭覚が敏感だから料理上手なんだよな!』 と言いました。 その時わたしは、ツトムの言うことを信じました。 やっぱり車の香水か、と納得できましたから。 そしてツトムの話を聞きながら、久しぶりに携帯のメール音に邪魔されず、笑いながら食事ができました。 しかし、私が後片付けをしていると、ツトムの携帯にメールを知らせる音楽が‥。 ツトムは急いで返信しています。 二人の久しぶりの時間に水を注されたようで、私の心は一気に落ちて行きました。 さらに携帯に夢中になっているツトムに 『チエコ、先にお風呂入っていいよ。』 と言われてしまいました。 今日はツトムと一緒に入れるかもと思っていた私は、ツトムの携帯が憎らしくて泣きたくなってしまいました。 ツトム? 携帯の相手は誰なの? 私よりも大切な人? もしかして女の人? そしてその女の人って… それ以上は考えたくなくて、黙ってお風呂に入りました。 最近、私はお風呂で泣いてばかり。 ツトムと一緒に入っていた時は、温かくて幸せで大好きだったお風呂。 今は、心は温まらなく淋しくて泣きたくなるお風呂。 また前みたいに幸せを感じたい。 どうしてこんな風になっちゃったのだろう。 どうしてツトムの気持ちが分からなくなっちゃったのだろう。 結局、寝るときも隙間のある背中合わせでした。 期待してしまっただけに、ひどく落ち込んだ夜でした。
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