山鳩とトナカイ~アタシ~

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山鳩とトナカイ~アタシ~

アレーシャの元から逃げ出すまで、ラマーンがワタシを必要としていた他にも。 ワタシを必要としているモノがいた。 それは、開発途中で逃げ出したトナカイと。 囚われの身の、動物たち。 トナカイの体の中には偶然にも、人間たちの欲望の印が含まれていて。 皮肉なことに、ワタシの力の一部とも思えるものが。 作用している。 トナカイはとても賢くて、アネーシャの本心を簡単に見抜くことができたから。 この能力のおかげで。 アネーシャも、ゲルダも幸せになることができた。 ワタシはひっそりとトナカイの様子を眺めていると。 トナカイは、何よりも思慮深く、自分の気持ちにとても素直でいて。 一緒に過ごしていた、山鳩の事を驚かせる。 山鳩はそんなトナカイを気に入っていたのか、時折助言をしながらも。 どうすれば、この世界が雪の世界になるまえに。 クラムボンに知らせるか、を考えた。 山鳩はトナカイに様子をみることを度々命じ、チャンスを伺った。 ワタシが来たことに気づいたか、気付かなかったかはわからないけれど。 山鳩とトナカイのおかげといっても過言ではなく。 ワタシはゲルダと共に逃げ出すことができる。 トナカイの生まれも、成長してきた環境も。 決して、平穏とも恵まれたともいえないけれど。 誰より素直に、相手の気持ちを受け止めることで。 上手に消化していく。 その能力こそが、人間の求める。 境のない、愛情の示し方、なのかもしれない。 神も、それを望んでいたのだろうか。 だから、ワタシを作ったのだろうか。 クラムボンという、希望を残して。 それでも、わたしは構わないと思う。 アナタの望む世界は、あくまでも均衡のとれているモノ。 なんでも、素直になれるばかりではないし。 それをより深く教えてくれたのは、トナカイたち。 セイベツというくくりなんて、大したコトではない。 だとしたら、クラムボンを受け止める以外、ワタシの存在はなりたたない。 でも、それでいいんじゃない? 真実の愛ってそれぞれなんだから♪
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