第二章 助ける者 食らう者

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そう思ってはいても、やはり自分一人だけ取り残されたような気分がして心の中がモヤモヤする。 家族の中では時間が流れ、毎日新しい事が記憶として残っていく。 私………。 私は、あの時と同じままだ。 あの時、紬を助けてから私の時間は止まった。 だから、抜け出す事もできない。 現に今、紬が落ちた消化用に溜まった池が目の前にある。 これは幻。 いつも家族を思い出すと、この場面に立っていた。 風に揺れる柵。 今助けに行ってしまったら、私が死んでしまう。   私が助かり、紬は死ぬ。 あの時、まっさきに紬を助けに行ったが今回は足が動かない。 だって、この先がわかっているから。 あの時、自分が死ぬと思わなかった。 今回は違う。 私が生き残って、紬は死ぬんだ。 怒りと悲しみが溢れ、いつのまにか助けた紬を恨んでいた。 悔しい。 むかつく。 奥歯をギリギリ噛みしめ、ぶつける所がない怒りは爆発しそうだった。
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