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すると、後ろから誰かに抱きしめられている感覚がした。
誰かはわからない。
抱きしめられている事も、もしかしたら幻なのかも知れない。
でもその手は温かく、怒りと憎しみで満ちた心を静めてくれた。
目の前にある光景が遠のいていく。
変わりに、真ん丸くてとても綺麗な満月が見えてきた。
気づくと、空を見上げたままスカイツリーのてっぺんにたっていた。
お尻に力を入れると、長い尻尾が揺れる。
「ああ。もうこんな時間になったんだ」
幻のせいか、体が重くてだるい。
かなり高い場所に姿を現したので、強風が体に吹き付けた。
まだしっかりしない体は、フラフラと左右に揺れる。
「二人は、どこにいるんだろ………」
重たい頭を振るい、匂いに集中した。
かすかに、望美の匂いがした。
目を細め、匂いがする方面を見た。
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