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だが小さな声だったため、なんと言ったのか望美には聞こえていなかったようだ。
首をかしげ「なに?」と聞き返してきたが、美里は首を横に振り「なんでもない。茜姉、遅いねー」と話題をかえた。
「遅くて悪かったわね」
不機嫌な声にドキッとする。
さっきまでいなかった茜が、真後ろに立っていたのだ。
縮こまる美里を茜は見下ろした。
「待っている側の気持ち、少しは実感できたかしら?」
皮肉たっぷりに美里に聞く。
そもそも、毎回遅刻しているのは美里のほうだった。
いつも下道を歩いて移動しているため、何かしらみちくさをくってしまうのだ。
言い返せない美里は、ウッと言葉をつまらせ耳を垂れた。
「いつも待っていただき、大変申し訳ありませんでした」
「6歳児のくせに、えらく丁寧な誤り方」
子供扱いされ、美里垂れていた耳をピンっとたたせた。
「生きてたら、9歳だもん」
「じゃぁ私は、生きてたら30歳ね」
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