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酸素マスクをしている禮もやせ細っているが、母親のほうはもっとやつれている。
どんなに禮が愛されているのか、この状況を見ればよぐにわかった。
美里はこの光景に、自分と自分の母親を重ねてしまう。
胸が痛い。
私も昏睡状態になっていれば、きっとお母さんもあんな状態になっていたに違いない。
哀れみでもあるが、半分幸せな感情もある。
だって、こんなにやつれるほど自分の事を心配してくれるのだから。
禮と母親の光景に見入っている美里の肩に、望美は優しく触れた。
「さっ、仕事にとりかかりましょ」
「うん」
仕事に集中するため、頭を振り自分の中で作り上げた幻想を振り払った。
三人は手を繋ぎ目を閉じた。
体がスゥーと冷たい風に運ばれていく。
何とも心地よい。
あの子の時とは大違いだ。
まだ、昏睡状態なって間もないのだろう。
堅い壁にあたる事もない。
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