成り代わりガム

2/6
2361人が本棚に入れています
本棚に追加
/500ページ
夏美ちゃんは、自分にまったく自信がない子でした。 勉強が苦手、スポーツもダメ、特に可愛いわけでもなくこれといった特技もない………。 そんな夏美ちゃんは、いつもクラスメイトを見てこう思っていました。 あの子に成り代わってみたい、と………。 あの子に成り代われたらどれだけ素晴らしいのだろうと、夢を見ながら夏美ちゃんは毎日を過ごしていました。 ある日、いつも行っている小さな駄菓子屋さんでお菓子を買おうとすると、ある商品が目に止まりました。 「成り代わりガム?」 白い袋にはいった大きな一粒のガム、後ろには小さな文字が書かれているだけで製造会社などは書かれていませんでした。 (変なガム………) そう思いながらも気づけば、夏美ちゃんはそのガムを手に持ってレジへと向かっていたのでした。 家に帰ってガムの袋の裏をよく見ると、小さな文字で説明書きのようなものが書かれていました。 「このガムに名前を成り代わりたい人の名前を書いてから噛むと、成り代わりたい人になれます………本当かな?」 成り代わりたい人、その言葉に夏美ちゃんの頭の中には成り代わりたい人の顔がいくつか出てきました。 頭がよくてテストでは、いつも百点を取っている紫乃ちゃん。 スポーツ万能で人気者の理恵ちゃん。 モデルをやっていて可愛い里穂ちゃん………。 グルグルと頭の中を成り代わりたい人たちの顔が回る中で、夏美ちゃんはチラリと明日の予定を見るとそこには算数テストの文字が書かれていました。
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!