成り代わりガム

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(まさか、あれ本当に成り代われるガムなんじゃ………) チラリと時間割を見ると、次の時間は体育、授業内容は苦手なバレーボールです。 夏美ちゃんは急いで着替えてからトイレに向かうと、ポケットに入れていた成り代わりガムとペンを取り出しました。 「今度は理恵ちゃんにしてみよう!」 スポーツが得意な理恵ちゃんは、夏美ちゃんが必死にバレーボールを追いかけているなかで華麗にサーブやパスを決めたりしていてとてもカッコいいのです。 そんな姿を思い出しながら、夏美ちゃんはガムに理恵ちゃんの名前を書くと口の中へと放り込みました。 そして体育の時間、まずは皆でパスの練習をしようとした時の事でした。 いつもなら夏美ちゃんは、ボールが飛んできた瞬間、慌てて手を出しても手に当たるだけでボールが跳ねずに落ちてしまいます。 だけど、今日は違いました………。 「それ!」 なんと、手が簡単に動いたあげくにボールがふわりと高く飛ぶのです。 それだけではありません。 試合となると身体が軽くそして早く動いて、あっという間にサーブやレシーブにアタックを簡単に決めてしまうのです。 憧れの理恵ちゃんみたいに身体が動く! あのガムは本物だ!と、夏美ちゃんは嬉しくなりました。 その日以来、夏美ちゃんは成り代わりガムを大量に買うと、様々な人に成り代わりました。 話が得意なあの子、料理が得意なあの子、裁縫が得意なあの子………。 色んな人に成り代わっていった夏美ちゃんは、気づけば以前の性格よりもずっと明るくなりました。 毎日が楽しいと感じるようになり、これも成り代わりガムのおかげだわ!と夏美ちゃんは嬉しそうに成り代わりガムを見つめるのでした。
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