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本当なら遠足だったということもあって、今日は早く授業が終わり依子ちゃんは1年生の教室を覗いてみましたが、武君の姿はありませんでした。
依子ちゃんは、急いで靴を履くと慌てて学校を飛び出して、家へと急ぎましたが途中で、ゆきちゃんの話を思い出して手芸屋さんへと寄りました。
「すいません、鈴をください!」
手芸屋さんで、金の小さな鈴を購入してから急いで家へと帰ると、家の中は静まり返っていました。
「おかあさーん?武ー?」
リビングに入ると、机の上に買い物に行ってきますとお母さんの文字で書かれた書置きが置いてありました。
依子ちゃんは書置きを確認してから、自分の部屋へとランドセルを置いて鈴を持ってから武君の部屋へと向かいました。
「武ー?」
ドアをノックしますが、寝ているのか返事がありません。
もう一度ノックしようとすると、部屋の中からボソボソと話し声が聞こえました。
武君の部屋にテレビやラジオはありません。
ましてや、スマホも持っていないのに一体何だろうと思いながら、ドアに耳をくっつけると今度はハッキリと声が聞こえました。
か細く聞こえるてるてる坊主の歌………。
そして、それに重なるように沢山の人が武君の部屋で喋っているのです。
『指をつめよう』
『いや頭は?』
『頭は細かくしないとダメだな』
『じゃあ目玉を入れよう』
『足も細かくしないとダメだよ』
『心臓は?心臓も入れようよ』
『髪の毛入れたよ』
『鼻も入れた』
『口が入ったね』
『歯は沢山入れてあげよう』
『ホラ、デキタ………』
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