てるてる坊主

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依子ちゃんが恐怖のあまりに、持っていた鈴を落とすとピタリと声が止むと、勢いよくドアが開いて複数の何かが飛び出していきました。 依子ちゃんは、突然開いたドアに驚きましたが、すぐに武君の部屋へと足を踏み入れました。 真っ暗な武君の部屋………。 血なまぐさい臭いが漂って、依子ちゃんは慌てて手で鼻を覆います。 「武………?」 呼びかけても返事がなく、依子ちゃんが一歩踏み出すと、ヌルッと生暖かい物が足に触れて慌てて足を離すと、やっと暗い部屋に慣れた目が映したのは赤黒い液体でした。 (血………!?) それも1滴2滴ではありません………。 夥しい量の血液が武君の部屋に飛び散っていたのです………。 依子ちゃんは、震える足を何とか踏ん張らせながら必死に立っていましたが、武君のベットを見てとうとう座り込んでしまいました。 武君のベット………。 そこには、大量のてるてる坊主が置かれていたのです。 しかし、そのてるてる坊主の顔はどれも赤い血で描かれていて、下や頭の部分からは指や髪の毛、歯など人間の一部だったものがはみ出ていたのです。 小さな爪、短い髪の毛………どれもどれも依子ちゃんには見覚えがあるものばかりでした。 だって、詰め込まれていたのは全部武君の身体なのですから………。 「いやあああああああああああ!!!!!」 依子ちゃんの悲鳴が部屋中に響く頃、落ちていたてるてる坊主の首には、いつのまにか金の鈴がついていたとか………。 貴方は、てるてる坊主を作ったことがありますか? 作ったことがある人はちゃんと、てるてる坊主にお礼をしていますか? 雨が降ったからって、てるてる坊主を存外に扱ってはダメですよ。 だって、てるてる坊主だって一生懸命頑張っているのですから………。 てるてる坊主には、ご用心ご用心………。
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