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些細な喧嘩
サークル棟を出ると、未だ日の光があって構内に植えられている桜の青々しい若葉が、夕刻の光の中春の風に揺れているのが見えた。ハルはそういえば昨年も同じような光景を見たなと思った。
そして、この学校に入学してもう二年目になるのかと改めて思う。まさか一年前には、自分のおちんちんが取れてしまう事態が起きるなんて想像も出来なかったなと思った。
時計を見ると、未だ寮の夕食までには少し時間がありそうだ。ハルは時間つぶしに生協の書籍部に寄って新刊本でも見てみようかと構内を歩き出した。
生協の書籍部で少し時間を潰した後、ハルが出ていこうとすると丁度生協の前に石田がいるのに気がついた。
「おぅい石田」
「おうハル。その……。今日は大丈夫だったか?」
石田は、あやふやな言い回してハルの様子を尋ねた。ハルの下半身の事がバレてやしないか心配してくれていたのだろう。
「ああ。うん。大丈夫だったよ」
「で、確認はしたのか?」
「え?何のこと?」
「いや、だから下半身が女のモノなのか何なのか……」
「いや、それはまだ……」
そう言われたハルは、うつむいて口ごもってしまった。 実は今朝方ハルは、誰もいないのを見計らって学内では数が少ない洋式のトイレの個室に入り、ジーパンとパンツを一緒に下ろしていた。
最初、便座の上で身を屈めて自分の股間を見てみようとしてみたのだけれど、体はそんなに曲がるものではないのでよく見えない。
仕方なく手探りで様子を確かめようと思ったのだが、指先が触れた途端妙に柔らかく湿った生々しい感触を感じて思わず指を引っ込めた。
怖くなったハルは恐る恐る周辺部を指でなぞってみたのだがよくわからなかった。一応、指先の感覚で周囲形を確かめることができたのだけれど、こういう形でこういう大きさのものが、女性器であるのかそれともユニセクシャルの性器であるのか、ハルには判別がつかなかった。
流石にハルは、石田にこういう事をいちいち説明するのは恥ずかしてと思った。
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