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「あら、それは残念ね」
「ま、真貴子先輩もご一緒にどうですか?」
ハルは精一杯の勇気を振り絞って言った。直ぐに、自分でも信じられない位に大胆な発言をいきなりしてしまった事に気がつき、心臓が脈打つのが判る。
「折角の二人なのに私が邪魔をしたら悪いわよ」
真貴子先輩がハルの誘いをかわす。
「邪魔なんて、とんでもないです」
ハルが必死になって言う。
「いや、だってさっきから見てると、石田君とハル君ってそういう仲なんでしょう?私が入り込んで良いのかしら?」
「えっ?そういう仲って?」
「私が声を掛けるまで、まるで「二人の世界」だったじゃない。大丈夫よ私は同性同士の恋愛には偏見は無いから」
「そんなわけ無いです!」
真貴子先輩のその言葉の意図に気が付いたハルは、顔を真っ赤にして叫んだ。よりにもよって石田となんて酷い。
「はいはい。ムキにならなくても大丈夫だよ。私は誰にも言わないからね」
「気を遣わなくて結構です。僕はノーマルなんですよ!」
とハルは言ったものの、今の男性器が取れた状態がノーマルなものであったのかどうか些か自信は無かった。
「とにかく。私はどんな愛の形の関係だってハル君の事を応援するよ」
そう言ってニヤリと笑う真貴子先輩のジト目の笑顔に、ハルはようやくからかわれていることに気が付いた。
「ふふ。ごめんなさいね。本当は今日の夜は私にも約束があるのよ」
真貴子先輩はそう言って笑った。約束とは一体何だろうか。ハルは少し気になったがどう聞けば良いのか判らない。
「じゃハル君。今度また誘ってね。私はもう行くから」
そう言い残して真貴子先輩は、去って行った。真貴子先輩が学食の方に向かっているのをぼんやりと眺めているハルに石田が憮然とした態度で声をかけた。
「おいハル。お前、あの女の事が好きなのか?」
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