些細な喧嘩

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「な、なんだよ急に」 「ハルは随分気に入られているみたいだが、あれは乳はデカイが良くない女だぞ。止めとけ」 「何言ってるのさ」 「普通の女と違って、魔女に惚れるとろくな事にはならないってことさ。振り回されてあげく捨てられるのがオチだ。早く別れろよ」 「失礼だぞ。だいたい僕の母さんは魔女だ」 「一般的な魔女が男をたぶらかすことはありふれた話だってのはお前も知っているだろう。ハルは身近に知っている自分の母親に対しては、そんな人じゃないって言えるかもしれないけれど、同じようにあの女が違うと言い切れるのか」  魔女である母の側で育ってきたハルは、確かに魔女の素質として石田のいうような人をたぶらかす事がある事はよく知っている。だからこそ今まで真貴子先輩を考える時にもハルが敢えて考えない様にしてきた部分でもあった。そこを無神経な石田にずばり指摘された様に感じてハルは腹立たしく思った。 「第一、僕と真貴子先輩はまだ付き合ってもないよ。余計なお世話だ」 「そうか。それなら良い。傷の浅いうちに距離を取っておけよ」 「何で石田に、そんな事を言われなきゃなんないんだよ」  ふくれっ面のハルは、石田に言い返した。 「そりゃお前が友達だからさ」 「 それだけ?」  石田は、顔を見上げるようにして問いかけるハルの表情に思わず赤面してしまうのを感じて素早く顔を背けた。 「ハル。お前は自覚して無いかもしれんが、ショタが過ぎるぞ」  ただでさえショタに好まれる雰囲気のハルなのに今は男性器も失っているのだ。それを知っている身としては、気を抜くとおかしな雰囲気になってしまうではないか。 「な、何を言っているんだよ」  真意を問うハルの言葉に、石田は横を向いたまま一度咳払いで誤魔化して言葉を取り繕った。 「とにかくだ。お前はもうあの女には関わるなよ」
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