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ハルは取り敢えず真貴子先輩を探すのを諦めて、トレイを持って三人で学食のレーンに並ぶ事にした。
「ハルきゅんって寮生だろう。今日は寮のまかないはお休みなの?」
一品皿のコーナーでマカロニサラダが入った小鉢を取っているハルに瑠奈が尋ねる。瑠奈は学校の近くでワンルームを借りて一人暮らしをしており、優香里は実家から通っていた。
「そうじゃないけど。今日はちょっと寮には帰りたくない気分なんだ」
ちらりと時計を見たハルは、いつもならもう寮の食堂で夕食を食べている時間だなと思った。
「へぇ。ハル君もそういうアンニュイな気持ちになるんだ」
瑠奈の肩越しから優香里が聞いてくる。
「いや。そんなんじゃなくて、実は石田と喧嘩したんだ」
会計を終わらせて、空いているテーブルを探していると、窓際の端っこの席に座っている真貴子先輩の姿が目に入った。
どうもハルの知らない男性と一緒に居る様だった。楽しそうに何か喋っている真貴子先輩の姿にすっかり気後れしてしまったハルは、しばしその場に立ち尽くした。
「ハル君向こうのテーブルが空いてるよ」
「あっ、ああ」
優香里と瑠奈に急かされるままに、ハルは壁際のテーブルに腰を下ろした。ハルが腰を下ろした席は、柱の陰になっていて丁度真貴子先輩がいるテーブルから死角になっているのが、今のハルにとっては少し有り難い様に思えた。
「石田君ってあの体の大きい人よね」
テーブル席に着くなり優香里がハルに聞いてきた。
「まぁ体はデカイかな。野球部に入ってるし」
「瑠奈も石田君の事は知っているよね?」
「うん。ハルきゅんといつも一緒にいる人だよね」
「寮でも同室だからね。一緒にいる時間は結構長いかも」
ハルの「同室」という話言葉に二人は反応した。
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