学食で夕ご飯

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「まぁハルきゅんは可愛いからね。生き物として可愛いからいじりたいと思っちゃうけど、ユニセクシャルの僕から見ると、中々恋愛の対象には見ることが出来ないんだよ」 「ちょっと瑠奈。恋愛対象じゃ無いって少し失礼じゃ無い?」 「それは仕方ないよ。僕らユニセクシャルは普通は恋愛対象となった相手によって性別が移ろうわけだけれど、相手に合わせる形で完全に自分の性の立ち位置が動いちゃうんだよね。 よく『主体性の無い性別』だなんて言われてるけれども、ハルきゅんみたいな人が恋愛の相手だとすると、自分が女性の立場から愛すれば良いのか、それとも男性の立場から愛すれば良いのか、ちょっと選べなくなってしまうもの」 「僕は男だよ。恋愛対象は女性だけだよ。恋人は女性じゃなきゃ困る」 「本人だけがそう思おうとしている所が、また可愛いよね」  そう言って瑠奈はケタケタと笑う。ふくれっ面になったハルを横目で見ながら優香里が瑠奈に尋ねる。 「でも。そしたら、もし瑠奈が本気でハル君と付き合ったら、今のユニセクシャルらしい瑠奈のまんまで恋愛出来るって事じゃ無い?」 「あっそうか。そう言う愛の形もアリなのかな」  そう言って考え込む瑠奈に優香里はたたみかける様に言う。 「自分の本来の、ありのままのに近い形で恋愛できるんだから、瑠奈にとってハル君みたいな人は理想の恋人って言えるんじゃ無い?」 「確かに自分をあまり変えなくて良いって言うのは楽かも知れないなぁ。どう?ハルきゅん。試しに僕ら付き合ってみる?」 「嫌だよ。瑠奈となんて」 「ハルは僕のこと嫌いなのかい?」  瑠奈はハルの目をじっと見つめて言った。瑠奈にのぞき込まれたハルはその瞳に思わずたじろいだ。 「嫌いっていうわけじゃ無いけれど」  まっすぐ瑠奈に見つめられて焦って口ごもるハルに優香里はからかうように言う。 「ハル君には石田君がいるんだもんね」 「まだ言ってる」 「まぁまぁ。ハルきゅん。気が向いたら本気で僕のことを考えて見てよ。自分で言うのも何だけれど、僕は君となら本気になれるかもしれないよ。僕に本当の愛というものを教えておくれよ」 「なんか嫌な口説かれ方だな」 「えー。そうかなぁ。ご婦人方に受けそうな演劇テイストを少し意識したんだけれど。駄目か」 「うん。やっぱり僕は瑠奈とはつきあえないや」  そう言って三人で笑った。
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