夜遊び

1/11
前へ
/135ページ
次へ

夜遊び

「で、どうしてこうなった」  優香里は飲みかけの発泡酒の缶を片手に立ち上がって言った。コタツに入っている瑠奈とハルは半ばあきれ顔で優香里を見上げている。優香里は続けて言う。 「おしゃれなダイニングバーで小粋なカクテルの一杯でも飲んでムードも盛り上がるはずだったのに。それがどうして三人して大学前のツルタヤでアニメを借りて、コンビニでお酒見繕って、ほっかり亭で買ってきた弁当をコタツで食べるって事になってるのよ」  ここは瑠奈が借りてるワンルームマンションで、テレビには何年か前に放映された深夜アニメのDVDが流れていた。  コタツの上には優香里が飲み干した発泡酒の空き缶の山と、ほっかり亭の弁当、それにコンビニで買ってきたお菓子や、おつまみが広がっている。 「だって優香里のせいで学食を食べそこなったから」  弁当を突きながらハルが言うと、瑠奈も調子を合わせてぼやく。 「僕の絶品学食中華丼も、結局半分ぐらいしか食べられなかったからなぁ」 「はいはい。それは私が謝るわよ。でも、それからどうして、こんなコタツで発泡酒にお弁当って話に落ち着くのよ」 「だって、まだ外は寒いし。ノリノリでコンビニの発泡酒を大量に買い込んでたの優香里だし。それに僕はほっかり亭の唐揚げ弁当好きだし」 「そもそも僕らお金ないし。チキン南蛮弁当が美味しそうだったし」  ハルと瑠奈が口々に優香里に言い返す。 「なによあんた達。こういう時は仲が良いわね」 「まぁまぁ。皆でコタツでアニメ見るってのも悪くないじゃん」  そうハルがなだめようとしても優香里の悪態は収まらなかった。   「大体、瑠奈はいい加減コタツしまいなさいよ。今何月だと思ってるのよ」 「えー僕はいつも梅雨時まで出しているよ」 「今日は寒いんだからコタツは丁度良いじゃん」 「はぁー。色気の無いお子様達だこと。これからでも夜の街に遊びに行く気力は無いの?」  そう言いながら優香里はまた発泡酒の缶を開けた。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加