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「あっそうだ。私も電話しなくちゃ」
「電話って誰に?」
「お父さん。今、勉強会していることになってんだから、そのアリバイ電話」
「せめてもう少し酔いが覚めてからにしときなよ。今電話すると酔っ払ってるのバレるよ」
「瑠奈うるさい。酔っ払ってないって言ってるでしょう」
そう言って優香里はその場で携帯を取り出して電話をかけ始めた。電話でなにやら話し始めた優香里の背筋が見る見るうちにピンっと伸びていくのが判る。
「はい。はい。ですから、そういった事はございません。はい。酩酊などはしておりません。ですから大丈夫です。いえ。一人で帰れますから。帰れますって」
携帯を握りしめて最後には叫ぶようように話していた優香里だったが、電話が終わると携帯を片手に呆然となっていた。
「優香里大丈夫?」
瑠奈に声をかけられてようやく我に返った優香里は、にわかに焦りだした。
「どうしよう瑠奈。今からお父さん来るって」
「え、ココに?」
「教科書教科書。急いで」
「え、何?」
「急いで勉強してたフリだけでも整えとかないと。お父さん魔法ですぐに飛んでくるから」
「そ、そうなんだ」
「あハル君だ。彼はどうしよう。父さんに男の子が一緒だってバレたら大変。すぐに隠れて貰わないと」
「え、お風呂場にでも隠れて貰う?」
「いやいやいや。お風呂は駄目だよ。全裸のハル君が見つかったらそれこそ大惨事だよ」
優香里はかなりテンパっているようだ。
「いや、別にハルをお風呂に入れようって言うわけじゃ無いよ。靴を持って風呂場に隠れて貰うだけだよ」
「そうか。じゃベランダの方が良くない?もし見つかった時には変質者が侵入しようとしていたって事にして」
「もう。馬鹿な事を言ってないで、優香里はお弁当とか飲んだ空き缶片付けなよ」
と、そこに玄関先からハルの声が聞こえてきた。
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