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早川教授に推しきられる形で、なし崩し的に玄関を突破された。
しかし今まで稼いだ時間で優香里が上手く勉強してたふりを整えてくれていたら、それで話は丸く収まるはず。
そう考えていた瑠奈の思いは、発泡酒の空き缶を片手に板場にぶっ倒れている優香里の姿でもろくも崩れ去った。
どうやら弁当などの後片付けをあらかた終わらした途端に気が抜けてしまったのか、空き缶を片付けようとした段階でそのまま酔いつぶれてしまったようだ。瑠奈が恐る恐る早川教授の方を見ると、早川教授は、にこやかに笑いながら瑠奈に話しかけた。
「瑠奈君。お茶を入れてくれるかな。早速皆でシュークリームを頂きましょう」
「あ、はい今すぐ」
教授にお茶を求められて瑠奈がキッチンに向かう。どうも早川教授はハル達に持ってきたシュークリームを食べさせたい様子だ。
早川教授は、倒れ込んでむにゃむにゃ言っている優香里の前にしゃがみ込み、何やら唱えた。姿勢制御系の呪文だったらしく、途端に優香里は飛び上がってその場に正座した。
「お酒を飲んだのですか」
正座させられている優香里に早川教授が聞く。
「すいません。ごめんなさい」
「謝る相手が違うでしょう。お酒を飲むなとは言いませんが、酔っ払って醜態をさらすのは良くない」
早川教授は諭すように優香里に言う。
「はい。反省しております……」
「では、暫くそこでそうしていなさい。瑠奈君、コタツに入っても良いかな」
「あ、はい。どうぞ」
瑠奈は、台所でお湯を沸かし紅茶の用意をしながらそう答えた。そこに小声でハルが声をかける。
「ねぇ瑠奈。僕はもう寮に帰った方が良いかな」
もし早川教授に、優香里が夜通しで男の子と遊ぶつもりだった事がばれてしまうとさらに不味い事になる。
「そうだね。ハルには悪いけれど優香里があれだし」
そのやりとりが耳に入ったのが、早川教授がハルに向かって声をかけた。
「ハル君。君もこちらでシュークリームを一緒に食べよう」
「は、はい」
ハルは断り切れず、すっかり逃げるタイミングを逃してしまった。
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