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「まぁ女難とも言いがたい相だがね。もっとも未来を変えようとか想って呪いを込める占術などとは違って、こういう日常的な占いなんて言うモノは、今流れている『気』を読んでいるだけだからあまり深刻に考えない方が良いよ。与太話の一つとして聞いてくれる位が丁度良い」
「そうは言っても、おじ様に良くなさげな事をいわれたら気になるよね」
瑠奈はポットから紅茶を注ぎながら言った。
「優香里も紅茶飲む?」
瑠奈は振り返って優香里に尋ねたのだが、優香里は正座したまましゅんとなって首をすくめたまま答える。
「いえ。結構です……」
ハルは優香里が可哀相で仕方が無いのだが、どうして良いのか判らない。そんなハルの横腹を突いて瑠奈が早川教授が持って来たお土産のシュークリームを食べるように催促する。
どうやらお土産のシュークリームを食べ切ってしまえば、取り敢えずこの奇妙な早川教授とのお茶会も終わり、優香里も解放されるだろうという事らしい。ハルはシュークリームをほおばった。と、空になったハルの皿の上に早川教授は新しいシュークリームを置いてくれた。
「ささ。まだ沢山ありますから遠慮せずにおべなさい」
瑠奈の方を見ると素知らぬ顔をしていて、どうやらハルが食べる役目のようだ。まぁ早川教授が持ってきたのは、小ぶりの箱だから数も知れているだろうし、すぐにでも空にできるだろう。
「美味しいですね。このシュークリーム」
瑠奈が無邪気に言う。早川教授が持ってきたシュークリームは、野いちごが載せられたサクサクとしたパイ生地の上から雪のような粉砂糖が降ってあって中々おしゃれだった。中にはしっとりとしたカスタードと軽い生クリームが二段重ねに入っていて、実際かなり美味しかった。
「そうですか。うちの近所の『チロル』と言う洋菓子店のものなんですよ。オーナーとは古い付き合いで、ウチではよく無理を言ってケーキを作って貰ったりしているのです。さぁ遠慮せずにどんどんお食べなさい」
にこやかな早川教授は、二人の空いた皿にまたシュークリームを配った。早川教授に促されてハルと瑠奈はシュークリームをぱくつく。
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