23人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の部屋に帰ってきたハルは、憮然とした調子で言った。
「なんで小塚がいるんだよ」
「おい。「なんで」とはなんだよ」
ハルと石田の部屋に、図々しくも小塚が上がり込んでいたのだ。
「まぁ、いいじゃないか」
小塚はお土産目当てに居座るつもりらしい。
「ケーキは二つしか無いんだよ」
「ハルはどうせ瑠奈様の所で何か食べてきたんだろう?」
「うっそれは……」
「だったらケーキぐらい俺に喰わせろよ。自分ばかり良い思いしているのはずるいぞ」
「別に良い思いとかはして無いんだけれど」
ハルは仕方なく、小塚に自分が食べようと思っていたケーキを明け渡した。
「旨いなこれ」
普段甘い物を食べている印象が無い石田がケーキの味を褒めた。
「うん。早川教授から頂いたんだ」
「優香里さんのお父さんの?」
「そうだけど」
「あの先生怖い」
小塚がケーキをほおばりながら言う。それを見ながら石田が小塚に言った。
「そういえば小塚は早川教授の講義を取っているんだってな」
「ああ占星術のな」
ハルは早川教授の振る舞いを思い返しながら言う。
「僕は別に怖い事はなかったけれどなぁ。どちらかというと紳士的で優しそうだったよ」
「怖いって言っても色々あるんだよ。なんて言うかなぁ……ふっと人の中を見透かしてしまう感じ。なんか底知れぬ感じの怖さとか」
「あっ、確かにそう言うのはあるかも。僕も少し占って貰ったんだけれど、一瞬、心の奥の方までみられてしまった様な気がした」
「ほう。で、ハルは占いの結果なんて言われたんだ」
「うーん。「女難」とも「男難」ともつかぬ相がどうとか」
「ハルが「男難」ねぇ」
小塚はそう言って、悟られぬようにハルと石田の方を盗み見た。いや、まさかな。小塚は心の中で呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!