帰宅

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 自分の部屋に帰ってきたハルは、憮然とした調子で言った。 「なんで小塚がいるんだよ」 「おい。「なんで」とはなんだよ」  ハルと石田の部屋に、図々しくも小塚が上がり込んでいたのだ。 「まぁ、いいじゃないか」  小塚はお土産目当てに居座るつもりらしい。 「ケーキは二つしか無いんだよ」 「ハルはどうせ瑠奈様の所で何か食べてきたんだろう?」 「うっそれは……」 「だったらケーキぐらい俺に喰わせろよ。自分ばかり良い思いしているのはずるいぞ」 「別に良い思いとかはして無いんだけれど」  ハルは仕方なく、小塚に自分が食べようと思っていたケーキを明け渡した。 「旨いなこれ」  普段甘い物を食べている印象が無い石田がケーキの味を褒めた。 「うん。早川教授から頂いたんだ」 「優香里さんのお父さんの?」 「そうだけど」 「あの先生怖い」  小塚がケーキをほおばりながら言う。それを見ながら石田が小塚に言った。 「そういえば小塚は早川教授の講義を取っているんだってな」 「ああ占星術のな」  ハルは早川教授の振る舞いを思い返しながら言う。 「僕は別に怖い事はなかったけれどなぁ。どちらかというと紳士的で優しそうだったよ」 「怖いって言っても色々あるんだよ。なんて言うかなぁ……ふっと人の中を見透かしてしまう感じ。なんか底知れぬ感じの怖さとか」 「あっ、確かにそう言うのはあるかも。僕も少し占って貰ったんだけれど、一瞬、心の奥の方までみられてしまった様な気がした」 「ほう。で、ハルは占いの結果なんて言われたんだ」 「うーん。「女難」とも「男難」ともつかぬ相がどうとか」 「ハルが「男難」ねぇ」  小塚はそう言って、悟られぬようにハルと石田の方を盗み見た。いや、まさかな。小塚は心の中で呟いた。
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