23人が本棚に入れています
本棚に追加
瑠奈の部屋
「狭くない?」
ベッドに俯せの状態で寝転がって頬杖をしている瑠奈は、物憂げな視線でそう言った。
肌触りが心地よいガーゼ布のカバーの掛け布団からは、瑠奈の華奢な肩が露出している。ハルは同じ布団の中で間近に瑠奈の横顔を見た。
「大丈夫だよ」
光線の加減で、ショートカットの髪から覗いている瑠奈の耳たぶに産毛が輝いて見えて、ハルはちょっとイタズラでむしってやろうかと思ったが、怒られそうなので手を伸ばすのをやめた。
二人が同じ布団の中に入るのは今日が初めてで、まだお互いに幾分ぎこちない所がある。ハルにとって、瑠奈の部屋のこの狭いベッドの上は居心地が良いような悪いような複雑な空間だった。
「ハルは小柄だものね」
瑠奈は小首をかしげるようにしてそう言って、ハルの方に目線を向ける。ハルは瑠奈の髪が揺れるのと同時にシャンプーの香りを感じた。瑠奈に触れたいという欲求が抑えられなくなりそうになった。
もし今の下半身に男性器があったのならばと考えてしまい赤面したハルは、思わず瑠奈に顔を背けて布団の中に潜った。
「ちょっとハル君、なにやってるのよ!」
カメラのレリーズを握っている優香里が叫んだ。組まれた三脚の高い位置からカメラのレンズがベッドの中のハルと瑠奈を捉えていた。光源やラフ版などかなり本格的な撮影機材がその周りを取り囲んでいる。
「大体、ベッドの中での物憂い表情が撮りたいのに、貴方達はガチガチじゃないの」
優香里が怒るので、ハルは言い訳をした。
「ごめん。やっぱりなんだか恥ずかしくなって」
「ハルだけじゃ無いよ。僕だって自分の布団にハルを入れるのは凄く恥ずかしいんだから」
起き上がった瑠奈は頭を掻きながら着ていたチューブトップの胸の所を指を引っ張り、はたくようにして空気を出し入れしながら言う。
「それに、この服。落ち着かない」
「はいはい。瑠奈は人が貸している服に文句言わない。でもハル君はこういう服好きでしょう?」
いきなり好きかと聞かれて戸惑ったハルは出来るだけ瑠奈の方を見ずに言った。
「肩が寒そうだよ」
「うん。実際寒いよ」
「瑠奈の肩の露出がこの作品のポイントなんだからそれぐらい我慢してよ。本当は大胆なセミヌードを撮りたい位なんだから」
そう言う優香里に瑠奈は呆れて返した。
「提出課題に普通そこまでさせる?」
最初のコメントを投稿しよう!