瑠奈の部屋

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 優香里が取っている魔法美術の講義で、写真作品を撮る課題が出ていたのだ。  古来より魔法は人の美意識と密接に関係してきたものであり、写真を通じて魔術的美意識を捉えようと言うのが課題の趣旨らしい。  この課題の優香里の熱の入れ様は大したもので、家から本格的な一眼レフのカメラや撮影機材を持ってきて、瑠奈の家でかれこれ二時間近く撮影を続けている。 「課題の分は、もう撮り終わっているわよ。今撮っているベッドの中の二人の写真はコンテスト用の作品よ。瑠奈の魅力に焦点を当てたいのよ」 「なんだよコンテストって」  瑠奈は学校の課題ぐらいならばともかく、コンテストで見知らぬ大勢の人の前に自分を写した写真が晒されることになるのは嫌だなぁと思った。そんな瑠奈の気持ちに構うこと無く優香里は自信ありげに言う。 「瑠奈の魅力があれば入選間違い無しよ」  「だったら瑠奈だけ撮れば良いじゃ無いか」  ハルが不満そうに優香里に言う。 「何言ってるの。ハル君はこの作品には必須よ。たとえフレームの外になっても、瑠奈の魅力を引き出すために相手となるモデルは絶対に必要なの」  優香里はそう力説する。 「えっ?僕は写ってなかったの?」  モデルと言われてあれだけシヤッターを切られたのに、写っていないと言うのも何だか釈然としない。 「写っているのと写ってないのがあるけれど、たとえ写って無くても重要なの」 「ないだいそりゃ。別に僕がモデルをしなくてもよかったじゃないか」  ハルは不平を言った。 「じゃハル君は瑠奈の相手役のモデルを他の誰かにやらせるつもり?」 「いや、それは……」  ハルは言葉に詰まる。小塚みたいなのが瑠奈の隣に収まるモデルに名乗りを上げたら嫌だなぁと思った。 「もう。つきあってられないよ」  二人のやりとりを聞いていた瑠奈はそう言ってベッドから飛び出した。
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