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「なによ。この前食べたシュークリームの分はモデルの役をやるって言ったのはあなた達じゃない」
先日、酔っ払った優香里を迎えに来た早川教授が持ってきたのは、ケーキ屋からシュークリームを転送してくる魔法が掛かった小箱だった。そこから次々と出てきた『チロル』のシュークリームは一個五百円以上もする高級品だったそうだ。
それに加えてハルと瑠奈に渡されたケーキの代金も含めて嘘をついて門限を破ろうとした罰として優香里のお小遣いから差し引かれているという。
少し可哀相だなと思ったハルと瑠奈は、ほんの軽い気持ちで埋め合わせとして優香里の写真作品課題のモデルを引き受けたのだった。
「モデルの役はもう十分やったでしょう。元々写真の課題の分って約束だったはずだよ。モデルごっこは終わり終わり」
「判ったわよ仕方ないわね」
仕方なく優香里は折れた。
「ハル」
瑠奈がハルに声を掛ける。
「なんだよ?」
「着替えるから、むこう向いてて」
そう言われたハルは慌てて瑠奈に背を向けてベッドの上で頭から布団を被った。そこに優香里が近づいてくる。
「ハル君。瑠奈は今、生着替えの真っ最中だよ」
「わ、判ってるよそんな事」
ハルが照れている様子を感じ取った優香里は内心にやりとした。先日優香里が不覚にも途中退場してしまった夜、ハルと瑠奈は肝心なところは何も言わないのだけれど、二人に何らかの進展があったらしい事を優香里は感じ取っていた。これは、からかいがいがある。
「もしかしてハル君、今お布団の匂いを嗅ぎながら「これは瑠奈の匂い」とか思っている?」
「そ、そんな事は……」
と言って否定しようとしたハルだったが、優香里に言われた事で、身にまとっているこの布団に瑠奈が毎日くるまれているのだという事を意識してしまった。
「もう、二人とも馬鹿なこと言ってないでさ、撮影会は終わりだから機材をとっとと片付けてよ」
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