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そのやりとりを聞いていた優香里が二人に言う。
「あななたち。折角のデートならもっと楽しそうな所に行きなよ」
瑠奈が食べていた中華丼を吹き出しそうになりながら優香里に早口で言い返す。
「ばっ馬鹿。デートなんかじゃないよっ。僕は課題で、アロマキャンドルを作らないといけないんだよ。その材料とか買わないとならないし」
「そうだよ。瑠奈とデートだなんて」
ハルはつい調子に乗って口を滑らせた。それを聞いた瑠奈は不服そうな口調でハルを責める。
「なんだよ。ハルは僕とじゃ不服なのかよ」
「そっ、そういうわけじゃ無いけど……」
「じゃぁ、なにさ」
「最初にデートじゃ無いって言ったのは瑠奈じゃないか」
「そりゃそうなんだけど……」
そういう二人の埒のあかないやりとりにカチンと来た優香里が椅子から立ち上がり言い放つ。
「あーもう。あなたたちは、いつも「そんなの」だから、いつまでも「そんなの」なんだよ!」
「なんだよ「そんなの」って」
瑠奈が優香里に言い返す。
「うるさい!「そんなの」は「そんなの」だよ!悔しかったらデートの一つでもして来なさいよ!」
その言葉に瑠奈は立ち上がった。
「判ったよ。行こうハル!」
瑠奈はハルの手を引っ張る。
「えっどこへ?」
「デートだよデート!」
瑠奈はハルの顔を見ずにぶっきらぼうに言う。
「僕、まだ午後の講義が」
「行くの?行かないの?」
煮え切らない態度のハルに、瑠奈はハルの方をむき直しのぞき込む様に問い詰める。ハルも意を決して立ち上がり答えた。
「行くよ!」
今度はハルの方から瑠奈の手を掴んで足早に学食を出た。ハルに手を引っ張られている間中、瑠奈はずっとうつむいたままだった。
優香里は、ハル達が残した学食のトイレの後片付けをしながら、明日また二人をからかってやろうと一人ニヤニヤしながら考えていた。
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