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「わかりません」
「ふ?ん」
菅沼は丈太郎のコップににもう一杯ビールを注いだ。
丈太郎は、今日山際と会ったこととその話しの内容を菅沼に聞かせた。
「へえ、山際と戸田は別々に行動してたんだ。俺にはそんなこと言わんかったぜ。警察も信用されてねえな。なあ、丈太郎」
警察ではなく菅沼自身が信用されてないんだろうと丈太郎は思ったが口にはしなかった。
「お前の話だと東和医科大学が何かくせえな」
菅沼は空になったビール瓶を持ち上げて店員にもう一本もってくるように催促した。
「なぜ、山際は田所のことをしらばっくれたんだ」
丈太郎は菅沼がまた丈太郎のコップにビールを注ごうとしたのを断った。アルコールに弱い体質ではなかったが今日は身体にこれ以上を入れない方がいいような気がした。
「遠慮するな、この店の大将の金さんは、在日二世なんだがな、ここに店を出すとき地元の右翼系の暴力団と一悶着あってな。たてまえは縄張り、つまるところは所場代を払う払わないのくだらないことだったんだけどな。まあ、もともとこのビル自体が林っていう在日がオーナーのビルだからな。縄張りなんてあってないようなもんだ。右翼も朝鮮人も裏じゃつるんでるのさ。で、その時俺が丸く治めてやったんだ。だから気にすることないぞ、遠慮はいらん。好きなもん喰え。ここの上ホルは旨いぞ」
菅沼は相変わらずだった。きっとこの街での飲み食いで金を払ったことはないだろうと丈太郎は厭きれた。
丈太郎は山際の態度に関する自分の考えを菅沼に話した。ここに来る間歩きながら考えたことだった。ただし、尾行に気付いてからは若干気が散ってまだよくまとまってはいなかった。
「東和医科大学の田所とシンノーファーマの戸田に何らかの関係があったことは間違いないでしょう。それが、戸田の自殺と関係あるかどうかはわかりませんが。それから山際ですが、山際と田所の間にもなにかありそうですが、それは戸田と田所の関係とはちょっと違うような気がします」
「それはどうしてだ」
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