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「……はい?」
男は先程の女子生徒を相手にしていた時と同じく、あくまで低姿勢で問いかけてくる男。
警戒心をあらわにしながら、暁彦が応じると、彼は校長達の方を振り返り、
「あとは、先生と二人でお話ししたいと思いますので、お二方はどうぞお仕事にお戻りください」
「し、しかしですね……」
食い下がろうとする教頭を校長がたしなめるように止め、小さく一礼をした二人はそそくさと足早に立ち去っていく。
二人の背中が廊下の向こうへと消えていくのをしっかり見送ってから、男は改めて暁彦に向き、屈託のない笑顔で笑う。
無言のまま警戒を強める暁彦とたっぷりと視線を交わしてから、男は言った。
「突然すみません。御堂暁彦先生」
「……失礼ですが、あなたは?」
「おおっっと、これは失礼しました」
男は大げさに驚いた仕草をしてから、スーツの内ポケットをまさぐり、写真付きのパスケース状になった身分証を取り出した。
「……警察の方……ですか」
暁彦はわずかに心臓がはねた。警察が、しかも単独で、いったい何をしに来たのか。
少なくとも、マークされるようなミスを犯したつもりはない。
疑問に思いながら暁彦が問いかけると、男は周囲を一度見渡してから苦笑し、小声になって言う。
「とりあえず、静かな場所でお話ししませんか?」
断る理由はなかった。
男に促され、暁彦は後に続いた。
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