第15話

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「あ。犬童さん大丈夫だった?」 『社長と奥様が出発する時間までは余裕がありましたので、支障なかったと思います』 「そう。それなら良かった」 『合鍵をお持ちとは知りませんでしたけど』 「念の為だよ。役に立ったでしょ」 『ご本人に知られた時の責任はご自分で取って下さいね』 「分かってるよ」 呆れた調子の声に笑いが込み上げ、つい、フッと息が漏れた。 『笑ってる場合では』 「ないね。すみません」 大好きな乾課長がこんな男だと知ったら飯山さんはどうするだろう? そう考えたら、口では謝罪の言葉を述べながらも、彼から見えない俺の口角は緩やかに上がっていた。
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