伝説は伝え説かれるもの

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 まあそんな他人に聞かせたら自慢にも聞こえてしまうであろう不幸など、贅沢な悩みなのだろう。  しかしそんな悩み事も氷山の一角ということで、俺自身も他にも数え切れない悩みもある。  例えば友達。  俺には親友と呼べる存在はいないと思う。「思う」というのは、俺は向こうは本当に良くしてくれていると思うのだがどうしても俺自身が心を開ききれないのが原因だ。  こんなことを自分で言うのもおかしい話だが、俺はいろんな人に慕われている。  その反面に敵が多いということは今はおいておこう。  だからこそ、俺に対して完全なる敵意丸出しで向かってくる人間など出会ったことはなかった。  逆に言うと、みんな優しかった。俺を妬むやつも、俺の肩書き――祖父の肩書きに恐れて直接的な攻撃はできなかった。  そういう経緯もあり、今までそこまで大きな障害もなく生きてきたのだが、今日は少し違うようだった。  入学式。  なんて人生で三回目のイベントなのだが、特に何ということもなくその行事も終えてからのホームルーム。  ホームルームもこれといった事もなく、少しばかりの連絡事項を聞いた後、今日は下校となった。
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