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戸惑いながら俺は再度少女に向き直る。
奇妙な雰囲気に、下校中の他の生徒がざわつき始めたため、俺は少女に困った笑みを向けて言う。
「ちょっと、場所変えない?」
■
恐らく、これほどまでに気が滅入るシチュエーションはなかっただろう。
見たこともない、名前すら知らない少女の後ろを会話もなく、話しかけれる雰囲気でもなく着いていくというのはなかなかに堪えるものがあった。
終始無言のまま連れられてきたのは人気の少ない喫茶店だ。
別段、腹が減っているわけでもないので頼むものもないので喫茶店が良かったのだが、そんなことを言えるような空気でもなかったので大人しく着いてきてしまった。
カツアゲでもされそうな不安感を覚えて席に着くと、少女はまず頭を下げた。
「名乗りもせずいきなりごめんなさい。私はエリナ・ティローネ。あなたと同じレイスティル高校の新入生よ」
その名前には聞き覚えがあった。いや、そのティローネという苗字の方なのだが。
その名前を聞いて俺は目を見開いた。
そんな俺の表情を見てか、エリナさんは一層目つきを尖らせた。
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