伝説は伝え説かれるもの

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 ティローネという苗字には祖父からよく聞いていた。いつかはこの一族と関わることは覚悟していたが、まさかこんなに早くとは思ってもいなかった。  エリナさんは最初の時のような刺々しい敵意は無いにしても、有無を言わせない威圧感に思わず身震いする。  肉食獣かっていうくらいの視線に店員さんも注文を聞きに来れないようなのでやめていただきたい。 「あ、あのさ……」 「やっぱり私の名前に聞き覚えがあるようだね。いや、そうじゃなきゃ困る」 「…………」  困るのは俺だ。  完全に萎縮しきった俺を前に、エリナさんは返答を待たずに続ける。 「君とは以前から話がしたかったよ。勇者の孫だなんて有名人からしたら私なんて下民も下民かもしれないが、少し話しをさせてくれないかな」  なんだこの嫌味たらしい言い方は。  少しばかり不快感を覚えた俺は、苛立ちを隠すように一息ついた。 「……で、いきなり何だよ。別に初対面と積もる話しもないけどな」 「うん、まあ。どうやら君のような者からすれば私のようなただの一般人のことなど目の端にも映らないのだろうね」 「エリナさん。いや、ティローネさん。君の家計のことは祖父からよく聞いてたよ。どういう関係だったのかも、全部ね」
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