伝説は伝え説かれるもの

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「……なら、私のことを知っていて話すこともないっていうのかな?」 「だから、もう終わった話しでいちいち噛み付いてくんなよ」  俺の一言にエリナさんはキレた。  静かに、それでもはっきり感じ取れるくらいにエリナさんはキレていた。  ダンッと、机を叩いて俯いたエリナさんの表情は見えないが、歯を食いしばって怒りを抑えようとしているのだろう。 「終わった話? どこが終わっているんだよ。勇者の名を盗み、名声を手にした君たちクレスター家はそんな非道な行いをして何も感じないって言うのか!」  搾り出すように吐き出したその言葉は、俺に深く突き刺さった。  ティローネ。その名はかつて、本物の勇者だった男の名である。  祖父が間違った名声を手に入れた際、その勇者の子が生まれていたと耳にしたらしい。  そのことを知った祖父はすぐさまティローネ家へと訪れ、そのことを全て洗いざらい説明したそうだ。  そして勇者の実の子供、つまりエリナさんの父親はそのことを全て知ることになり、祖父とは少なからず和解していたそうだ。  そのことを言いふらすこともなく、現状に文句を言わなかったエリナさんの父は本当に偉大だと思う。
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