プロローグ

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 しかし、俺はそんな現状がとても嫌だった。  周りの人間から無条件で持ち上げられ、知らない人間にも有無を言わせない声援を浴びせられる。  こんな苦痛があるだろうか。まるで偶像のように崇められることが悪いとは言わない。  しかし事実がねじ曲げられてのこの周りからの評価は肩身が狭い思いだった。  元々、騎士として生きてきた祖父は謹厳実直な性格だった。真面目も真面目、俺が生きてきて出会った中で最も誠実な人間だったと思う。  そんな祖父がただの勘違いで、別人の功績を横取りしてしまった事実に、それからの余生は悔いても悔いれなかっただろう。  別に俺はそのことをどうこう言うつもりもないし、どうにかできるとも思っていない。でも、祖父の顔に泥は塗れないとそれなりに努力を惜しまなかったつもりだった。  いくら崇められる存在とは言え、それを良くは思わない奴らも腐るほどいた。  難癖をつけてきて金をむしろうとする奴や、祖父が昔にお世話になったとかで甘い汁を吸おうとするような面倒な連中に目をつけられることなんて日常茶飯事だ。  だから、今日もいつものように俺は玄関の前に立つうさんくさそうな男に思わずため息をついた。
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