プロローグ

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「マルク・クレスターさん、あなたの祖父とは私の祖父もとても深い中で、それこそ魔王討伐での冒険や戦いの苦楽を過ごしてきた仲なのです。その私の祖父がですね、重い病で床に伏しているのですよ……。そのことでなのですが――」  俺の呆れ顔とは違い、目の前のくたびれたサラリーマンのような男は作ったような演技で詭弁を振るっていた。  まず、俺の祖父は騎士であって冒険などしない。そして祖父と魔王討伐の際の戦友は魔王との対峙時に全て戦死している。  こんなこと調べればすぐに分かるだろうに、なぜこんな分かりきった嘘方便で俺を騙せると思ったのだろうか。  いや、こういう連中は本当に何かしらの手柄が得られると思っているものだ。  俺は頭を掻きながらもう一度ため息をついて男のペラペラとよく喋る言葉を遮った。 「あのですね。あなたの言いたいことはよく分かりました。しかし祖父は遺言として、祖父に関してのこういった昔の関係を持ち出してのことには一切対処しなくてよいと言われているので、お引き取りください」  愛想笑いを浮かべて頭を下げた俺を見た男は、その物腰に余裕を持ったのか顔色を変えて叱責の声をあげた。 「あなたはそれでも勇者の子孫ですか! それに勇者ともあろうものが昔の縁やゆかりをおろそかにするなんて聞いて呆れる!」
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