語られない伝説

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 それでも、シルク先生の魔法使いをも圧倒するであろうそれは、血の滲むような努力が垣間見える。  俺は『才能』なんて言葉は嫌いだ。努力も、成長も、本人の意思も全てを無視してその言葉一つで片付けられるからだ。  それでも、俺は今この瞬間。  才能という壁を目の当たりにしてしまった。            ■  俺の試合後、妙に活気づいていた演習場だったが、そのたった数分後には静寂に包まれていた。  その中心にいるのはエリナさん、そして片膝をついたシルク先生。  結論から言えばエリナさんがシルク先生を圧倒していた。  たった数分での出来事だ。こういう場合、圧勝というべきなのか。少ない攻防の中でも、エリナさんが圧倒的に優勢を保っていたのが分かるくらいだ。  そしてその静寂は徐々に解かれ、ざわざわと騒がしくなってくる。 「すげえ! シルク先生に勝ったぞ!」  誰かがそう言うとそれはこだまするように伝播し、演習場は盛大に興奮に包まれた。 「あの勇者の孫と同等じゃないのか!」  なんて言葉が聴こえてくるが、目が悪いのか。俺なんか足元にも及ばないと思う。
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