43人が本棚に入れています
本棚に追加
それでも、シルク先生の魔法使いをも圧倒するであろうそれは、血の滲むような努力が垣間見える。
俺は『才能』なんて言葉は嫌いだ。努力も、成長も、本人の意思も全てを無視してその言葉一つで片付けられるからだ。
それでも、俺は今この瞬間。
才能という壁を目の当たりにしてしまった。
■
俺の試合後、妙に活気づいていた演習場だったが、そのたった数分後には静寂に包まれていた。
その中心にいるのはエリナさん、そして片膝をついたシルク先生。
結論から言えばエリナさんがシルク先生を圧倒していた。
たった数分での出来事だ。こういう場合、圧勝というべきなのか。少ない攻防の中でも、エリナさんが圧倒的に優勢を保っていたのが分かるくらいだ。
そしてその静寂は徐々に解かれ、ざわざわと騒がしくなってくる。
「すげえ! シルク先生に勝ったぞ!」
誰かがそう言うとそれはこだまするように伝播し、演習場は盛大に興奮に包まれた。
「あの勇者の孫と同等じゃないのか!」
なんて言葉が聴こえてくるが、目が悪いのか。俺なんか足元にも及ばないと思う。
最初のコメントを投稿しよう!