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「これは俺の家族での決まりごとでして、俺にはどうにも出来ません」
「なにが勇者ですか! どうせ自分が大物になったら他人などどうでもいいのでしょう! 全く私たちのような下民など目の端にもかからないのでしょうね! それに――」
それにしてもよく喋る。
なぜ俺が朝っぱらから知らないおっさんに怒声を浴びせられなければならないのだろうか。
それに俺の家は別に裕福ではない。お金が使い切れないほどあるとは言え、それをバカみたいに使うのは祖父の意思とは反する。
祖父や父親は堅実な性格で、それこそ俺が成人するまで不自由しないほどの蓄えを残してくれていた。
それを切り崩しての生活なので、他人を援助するほどの余裕はなかったりする。
それに見ず知らずの男に金をあげるほどお人好しでもないし無用心でもない。俺はそろそろ学校に行かなくてはならないし、早く引き上げてもらうために声色を低くする。
「いい加減帰ってくれませんかね。あなたが祖父と何も関係ないことなんて話し聞いてればわかりますし、面倒なのでそろそろやめません?」
「…………ちっ」
まるで俺が悪いのかのように、あらかさまに表情を悪くした男は、悪態をつきながら踵を返して去っていく。
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