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この国の魔法使いは、いわゆる血統が全てなわけですが、まぁそれも修行次第では幾らか成長したりもします。
でも、友人の一人であるカヤは、血統は良いはずなのになかなか腕が上達しません。
ちなみに私も魔法使いです。仕事は一応保育士で、主に魔法使いの子供たちの面倒をみているのですが……。
「先生、何か落ちてくるよ!」
昼下がりの自由時間。一人の少年の声を合図に見上げると、確かに頭上から何かが近づいてきます。
「危ないから、砂場から離れてください!」
私は慌てて声を上げました。
そして指先をそちらに向けて、その座標をぴたりと捕らえます。
落ちてきたのは、あろうことか魔法使いの箒でした。
「この箒、カヤさんのだよね」
砂場に作られていたお城――と言う名の山――の真上で、私はそれをぴたりと停めます。
すると、離れていた子供たちがわらわらと戻ってきて、そのうちの一人がずばりと言い当てました。
そうです。これは紛れもなくカヤの箒。
「そうですね。カヤさん、また落し物したらしいですね」
私は溜息混じりに頷きました。
危うく、子供たちの力作が台無しになるところでした。
と、思っていたら、
「先生!また何か落ちてくるよ!」
「ええ、またですか?」
今度は見上げる前に落ちてきたので、停止させるのが間に合いませんでした。
どすんと言う音と共に、派手に舞った砂埃の中から、姿を現したのは箒の持ち主の方でした。
彼が壊してしまった砂の城を、子供たちに弁償させられたことは言うまでもありません。
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