00.Prologue

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 寝癖のついた長い髪を櫛でとかし、猫耳のように結んだリボンの形を頭の上で整える。色は昨日の黒からがらりと変えた桜色だ。 「うん、今日も可愛い」  最後に唱えるようにつぶやいて、小さいながらも気に入っているドレッサーにカバーをかける。本当にそう思っているわけじゃない。昔から続けている、自分を鼓舞するためのささやかなおまじないだった。  そうして部屋を出る直前、少女は思い出したように傍らに立て掛けていた箒に目をやった。 「そうだった、あなたにもこれ」  当然返事はなかったが、構わず笑みを浮かべて揃いのリボンを結びつける。 「それから、あなたも今日はこっち」  その隣には籐のかごがおいてあった。中にはまだ眠そうにあくびをする黒猫の姿がある。少女は黒猫の首に巻かれていた黒いリボンをはずすと、持っていた自分と同じ色のものと取り替えた。 「ふふ、とってもよく似合う。やっぱりミルクにはこっちの方が似合うわね」  見上げてくる黒猫に向かって、嬉しそうに微笑む。 「ユアー、お茶が入ったよ」 「はぁい、先生!」  そこにドアの外から声がかかった。不意に名を呼ばれた少女は顔を上げ、明るい声を響かせた。軽やかな靴音を響かせ部屋を出ると、裾にレースをあしらった、ふわりと広がるスカートを揺らしながらキッチンに向かった。
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