5人が本棚に入れています
本棚に追加
寝癖のついた長い髪を櫛でとかし、猫耳のように結んだリボンの形を頭の上で整える。色は昨日の黒からがらりと変えた桜色だ。
「うん、今日も可愛い」
最後に唱えるようにつぶやいて、小さいながらも気に入っているドレッサーにカバーをかける。本当にそう思っているわけじゃない。昔から続けている、自分を鼓舞するためのささやかなおまじないだった。
そうして部屋を出る直前、少女は思い出したように傍らに立て掛けていた箒に目をやった。
「そうだった、あなたにもこれ」
当然返事はなかったが、構わず笑みを浮かべて揃いのリボンを結びつける。
「それから、あなたも今日はこっち」
その隣には籐のかごがおいてあった。中にはまだ眠そうにあくびをする黒猫の姿がある。少女は黒猫の首に巻かれていた黒いリボンをはずすと、持っていた自分と同じ色のものと取り替えた。
「ふふ、とってもよく似合う。やっぱりミルクにはこっちの方が似合うわね」
見上げてくる黒猫に向かって、嬉しそうに微笑む。
「ユアー、お茶が入ったよ」
「はぁい、先生!」
そこにドアの外から声がかかった。不意に名を呼ばれた少女は顔を上げ、明るい声を響かせた。軽やかな靴音を響かせ部屋を出ると、裾にレースをあしらった、ふわりと広がるスカートを揺らしながらキッチンに向かった。
最初のコメントを投稿しよう!