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リビングのドアを開けると、やはり、そこにいた。
ちょうど冷蔵庫くらいの大きさの、黒い毛長の怪物。
モン・モだ。
テーブルに細い肘をついている。
おれの椅子に座り、赤い眼でじっとこちらを見ている。
「わかった、わかったからちょっと待ってろ!」
おれは、その日の予定を、すべてあきらめた。
新しい仕事の面接。クリーニングの受け取り。映画を観る約束。
ぜんぶ、いったん後回しだ。
おれは、フライパンをコンロに、やや乱暴にのせた。
ブロッコリーと牛肉があった。卵も。新しいニンニクも半分残っていたはずだ。
「おい、料理の邪魔はするなよ」
モン・モはわかったのか、わかっていないのか、テーブルの上のはちみつ壷を弄りながら、ギャ、と鳴いた。
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