#01 * 雪将

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「今日はもう帰ろう? 家はどっち?」 <まってね> という風に口が動いた後、歌子さんはメモに何かを書き始めた。 恐らくは家の方角についてかな? そう思って一歩踏み出した瞬間…… ガランガランガラン!!!!!!! 不覚にも清掃用のバケツを思い切り蹴飛ばした。 何でこんな所に……あぁ、ビックリした。 「あ、ごめん。えっと……」 何気なく向き直って、僕はギョっとした。 彼女はひどく青ざめた表情で、強張ったまま微動だにせず、 宙の一点を見つめていたのだ。 「あ、ごめん。びっくりしたよね。本当にごめんなさい。あの……」 そこまで言いかけた時、彼女は一目散に走り出した。 物凄いスピードでトイレを出て、そのまま…… 一体、何が、どうしたというんだ……
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