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「言っておきますけどからかっていません。罰ゲームでもありません」
「では何故? 何も知らないのに」
「――ジュンさん、私を知りたいですか?」
まぁ、はい、と僕は頷いた。
「そういう事です」
と、彼女はカップを置いて前のめりになって、僕のずり下がった眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げた。
その近さに思わず、少しだけ後ろのめりになる。
「私、見たいんです。ジュンさんの事。だから私を見てほしい――意味、わかります?」
……困った、目が離せない。
ここまで僕の事を真っ直ぐに見てきた人は多分いない。
数ミリの薄いレンズがあって助かった。
それほどに彼女の目は、僕の中を見ようとしていた。
「――わかりました。検討しましょう」
そう言うと彼女は少しだけ眼鏡を上げて、頬を染めて微笑んだのだった。
『coke』おわり。
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